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“稚魚が貝のフリ”をして得するのは親だった!?第3者が利益を得る擬態を初めて確認

プレスリリースはこちら

本件は下記のメディアで紹介されました。<(夕)は夕刊 ※はWeb版>
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◆1/13 NHK「おはよう関西」
     NewScientist
◆1/19 朝日小学生新聞
◆1/29 読売新聞

概要

 生物による擬態にはいくつか種類がありますが、いずれの例も擬態することで利益を得るのは擬態者自身です。大阪市立大学大学院理学研究科の幸田正典(こうだ まさのり)教授と大学院生の佐藤駿(さとう しゅん)らの研究グループは、アフリカのタンガニイカ湖に生息する魚種(フルシファー:稚魚が小さな巻貝に擬態)において、擬態により利益を得ているのは子ども(擬態者自身)ではなく、子どもを捕食者から守る親(第三者)であることを確認しました。このように第三者が利益を得る擬態の例は、世界で初めての発見です。

 本内容は2017年1月5日午前9時20分(日本時間)に、米国の動物行動学の専門誌Animal Behaviourにオンライン掲載されました。

雑誌名:Animal Behaviour
論文名:Parental females of a nest-brooding cichlid improve and benefit from the protective value of young fish masquerading as snails
著 者:Shun Satoh, Tetsumi Takahashi, Shinya Tada, Hirokazu Tanaka, Masanori Kohda
掲載URL:http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0003347216303323

本研究の概略

 擬態はさまざまな生物で知られています。枯れ枝そっくりの蛾の幼虫や鳥の糞に似た白黒柄のゾウムシは擬態の典型例です(図1)。擬態には、この蛾の幼虫のように捕食者が餌動物を背景と区別ができない場合(=隠蔽)や、食べられないもの?まずいもの?毒のある餌動物などと勘違いして食べない場合などがあります。

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図1 (1)鳥の糞に擬態していると思われるゾウムシの一種と、
(2)枝によく似たヤママユガの幼虫

 タンザニアとコンゴの間に位置するタンガニイカ湖の魚類の多くは、親が子どもを保護します。その一種であるフルシファー(全長15cmほど)が保護する子ども(1~3cm)は遺伝的に白黒模様をもっており、その柄は「餌でない」巻貝によく似ています。子どもの体色が巣場所にたくさんいる白黒模様の巻貝をモデルとした擬態であることが、以下の観察や実験で明らかになりました。
1)この魚の子どもはモデル貝に大きさ?形?体色がよく似ている(図2)。
2)この魚はタンガニイカ湖沿岸域に広く分布するが、白黒のモデル貝の生息する地域の子どもにのみ白黒模様がある。
3)雌親は他の貝を除去することで、巣のモデル貝の密度を高めていた(図3 動画あり)。
4)巣からこのモデル貝を実験的に除去すると、雌親の捕食者に対する攻撃回数は倍増した。一方、雌親に保護されているため、子どもの生存率は低下しなかった(図4-(1))。
5)モデル貝の除去後、子どもへの捕食魚の接近が倍増した。この結果はこの色模様に擬態としての効果があることを示す(図4-(2))。

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図2 雌親保護下のフルシファーの子ども(1)と巣のモデル貝(2)。
フルシファーの子どものスケッチ(3)。モデル貝(4)。
雌親が巣から排除したモデル以外の巻貝(5、6)。
モデル以外の巻貝と子どもはまったく似ていない。

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図3 モデル貝は雌親の縄張り内に多く生息しており、
縄張り外では少ない(1)。一方、モデル貝以外の巻貝
は縄張り内では少なく、縄張り外に多く生息する(2)

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図4 子どもの生存率(1)と雌親の捕食者への攻撃回数
(2)。(巣のモデル貝を除去する前後での比較)

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図5 フルシファーの雌親が子どもを守っているところ。
(1)モデル貝がいる場合、捕食者は白黒模様の子どもに気が付かない。
(2)モデル貝を除去すると子どもは目立ち、捕食者の接近が増加し雌親の攻撃(負担)は増える。
(1)と(2)での子どもの生存率には差がない。(図4-(1))。

 このように、本種の子どもはモデル貝に似ており、モデル貝の密度が高いと、子どもの白黒模様による擬態の効果が上がり雌親の保護負担が軽減されます。一方、モデル貝の除去により擬態の効果が下がると、雌親の保護負担は倍増しますが、子どもの生存率に変化はありません。つまり、子どもの擬態により親が利益を得ているのであり、親の保護下の子ども自身が直接利益を得ているわけではないことがわかります。
 フルシファーのように、第三者(雌親)が他個体(子ども)の擬態の効果を高めるように働きかけ、その結果第三者自身が利益を得ているという例は世界で初めての報告です。本発見は擬態の起こり方がこれまで考えられている以上に多様であることを示唆しています。

今後の展望:珊瑚礁や熱帯湖で擬態の多様性

 昆虫をはじめさまざまな動物で擬態の例が知られていますが、詳細な研究は陸上動物に偏っています。珊瑚礁やタンガニイカ湖のような種数が多く種間関係が複雑な水域でも擬態の例は多いのですが、詳細な研究はまだ手つかずの状態です。今後も熱帯湖や珊瑚礁などで魚類や無脊椎動物についての詳細な行動観察から、新しいタイプの擬態が見つかり、生物の進化や行動に関する理解が進むことが期待されます。

本研究について

本研究は下記の資金援助を得て実施されました。
科研費『脊椎動物の社会進化モデルとしてのカワスズメ科魚類の社会構造と行動基盤の解明』