公立大学法人大阪市立大学
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大腿膝窩動脈の潰瘍性プラークが膝下動脈の塞栓源の1つであることが明らかに

2022年02月03日掲載

研究?産学

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本研究のポイント

◇膝下(ひざした)動脈の閉塞狭窄の程度は下肢閉塞性動脈硬化症の予後と相関する。
◇血管内視鏡で大腿膝窩動脈※1に観察される潰瘍性プラーク※2で生じる血栓が膝下動脈の塞栓源であることを初めて明らかに。
◇下肢閉塞性動脈硬化症に適した薬物療法の決定に寄与できると期待。

概要

 大阪市立大学大学院医学研究科 循環器内科学の山崎 貴紀(やまざき たかのり)講師、山口 智大(やまぐち ともひろ)後期研究医らの研究グループは、血管内視鏡で大腿膝窩動脈に観察される潰瘍性プラークで生じる血栓が膝下動脈の塞栓源であることを初めて明らかにしました。本研究成果は、下肢閉塞性動脈硬化症に適した薬物療法の決定に寄与できると期待されます。
 下肢閉塞性動脈硬化症の患者において、膝下動脈の閉塞狭窄病変の程度は予後と相関する重要な因子として知られています。近年の病理学的研究から上流からの血栓による塞栓が膝下動脈病変の形成機序の一つとして想定されていますが、血栓が生体内のどこで生じているのか未だ同定されていませんでした。
 そこで、本研究グループは、医学部附属病院の循環器内科において大腿膝窩動脈に対して経皮的下肢動脈形成術を施行した連続症例研究31例を対象とし、手技開始前に血管内視鏡を用いて膝下動脈の上流血管である大腿膝窩動脈を観察しました。その結果、血管内視鏡で潰瘍性プラークが観察された23人(74.2%)の患者のうち22人(95.7%)に血管壁に血栓像が観察され、これは潰瘍性プラークが観察されなかった群より高く(37.5%)、また、潰瘍性プラークは膝下動脈の閉塞狭窄の程度を示す指標(Angiographic runoff score)とも強い相関があることがわかりました。本研究成果は、2022年1月31日(月)に『Journal of Vascular and Interventional Radiology』(IF = 3.464)にオンライン掲載されました。 

補足説明

※1 下肢の大腿を流れる動脈。
※2 動脈硬化によって起こる血管壁に見られる扁平もしくは隆起したかたまり。

研究者からのコメント


山崎 貴紀講師

 近年の閉塞性動脈硬化症に対するカテーテル治療の進歩は目覚ましいですが、治療成績はまだ十分とは言えません。今回の研究のように下肢動脈のプラークの性状を詳細に評価することは、病気の機序解明、さらには最適な治療法の発展に役立つと考えています。


山口 智大後期研究医

掲載誌情報

雑誌名:

Journal of Vascular and Interventional Radiology(IF = 3.464)

論文名:

Angioscopic Ulcerated Plaques in the Femoropopliteal Artery Associated with Impaired Infrapopliteal Runoff

著者:

Tomohiro Yamaguchi, Takanori Yamazaki, Hisako Yoshida, Ou Hayashi, Ryosuke Yahiro, Kazuhiro Nakao, Tsukasa Okai, Shoichi Ehara, Yasuhiro Izumiya, Minoru Yoshiyama

DOI:

https://doi.org/10.1016/j.jvir.2021.10.013