公立大学法人大阪市立大学
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「結び目理論を応用した図形ゲーム」による幼児の数学教育効果の調査研究を開始

大阪市立大学は、結び目理論を応用した図形ゲーム「領域選択ゲーム」(Region Select)を用いて、幼児の数学教育効果の調査研究を保育園、幼稚園の協力を得て開始しました。
本学数学研究所の河内明夫所長(理学研究科教授)を中心とする研究チーム(現 大阪工業大学:岸本健吾特任講師、現 広島大学:清水理佳特任助教)は、2011年に結び目理論を応用した図形ゲーム「領域選択ゲーム」を考案し、その年の12月には、共同研究先の株式会社グローバルエンジニアリング(本社:名古屋市中村区名駅南2-10-22)からスマートフォン用図形ゲームとして商品化を実施しました。
今回、同じく(株)グローバルエンジニアリングの協力を得て、この図形ゲームの幼児版を製作し、数字をよく知らない幼児がどの程度図形による数学アルゴリズムを獲得できるかを研究するための検証を開始しました。

結び目理論を応用した図形ゲーム01

調査対象としては、幼児教育に熱心に取組んでいる大阪教育大学附属幼稚園、大阪女子短期大学地域子育て支援研究所、社会福祉法人晴朗会すくすく保育園の3施設に、この幼児版の図形ゲームを組込んだタブレット端末を配布して、その教育効果のデータ取得を依頼しました。
取得データの解析とその教育効果の検証は、「結び目の数学教育研究会」(代表 柳本朋子大阪教育大学教授)に依頼して行います。

調査検証の概要

  • 調査期間
    平成25年1月下旬~9月上旬
  • 調査目的
    幼児の数学力を向上させるための教材として、結び目理論を応用した図形ゲーム「領域選択ゲーム」の幼児版を使い、その教育効果を検証する。
  • 調査対象
    (1)大阪教育大学附属幼稚園
    (2)大阪女子短期大学地域子育て支援研究所
    (3)社会福祉法人晴朗会すくすく保育園
    (実施期間:平成25年1月下旬~3月下旬)
  • 教育効果の検証
    「結び目の数学教育」研究会(柳本朋子大阪教育大学教授代表)
    (実施期間:平成25年4月上旬~9月上旬)
  • 調査方法
    幼児版の結び目ゲームを組込んだタブレット端末(10台)によるデータ取得

領域選択ゲームとは

「領域選択ゲーム」は、大阪市立大学 数学研究所によって開発されたものです(特願2011-95520)。今回、製作した幼児用「領域選択ゲーム」の代表的な結び目の図形を図に示します。
幼児用の図形ゲームの場合(下図(b)を参照)は、一筆で描ける茎(線)の交わる部分に例えば、朝顔のつぼみの図形を配置し、茎(線)で囲まれた閉領域を指でタッチして選択するごとに、この領域に接する交点のつぼみが開花(点灯)したり、つぼみに戻ったりを繰り返します。ゲームクリアの条件は全てのつぼみを開花状態にすることです。
ルール通りに描かれた図形であれば、朝顔の状態がつぼみ、開花のどのような状態であっても必ず全ての朝顔を開花できるということが、数学の結び目理論で証明されています。
数学を応用した文字や数字を使用しない頭脳ゲームですが、数学の知識を必要としません。操作?ルールは簡単でありながら、直感力や数手先を読む思考力が試されるという特性を持っており、就学前児童や、小学校低学年児童の図形教育、および高齢者の視空間認識機能リハビリテーションに役立つことが期待されています。

結び目理論を応用した図形ゲーム02 結び目理論を応用した図形ゲーム03
(a)????????????????????????? (b)
幼児用「領域選択ゲーム」の代表的な結び目の図形

研究の概要

数学に限ってみると、左脳には、論理的思考、数学の知識、抽象的思考などのメカニズムが集中し、右脳には空間的視覚機能、空間感覚?空間認知、視覚的記憶などのメカニズムが集中しています。数学を考えるには、まず数学の具体的なイメージをもつ力が必要となりますが、それは図形教育による右脳思考の訓練により培われるものです。
結び目理論の初等部分は、ユークリッド幾何の進化した図形の研究です。結び目理論を応用した図形ゲーム「領域選択ゲーム」の1つ1つは、ある0と1からなる係数の多変数の連立1次方程式を解くことと同等であり、これはすなわち右脳思考の訓練になります。
幼児に数学を教えようとする場合、一般には、まず数字を暗記させることから始めます。しかし、それは将来の数学の勉強のための重要な準備作業ではありますが、右脳思考の数学訓練や数学アルゴリズムの訓練などの数学力を向上させるための訓練とはいえません。
この「領域選択ゲーム」幼児版では、数字を知らない幼児にも数学力を向上させることが可能であることを検証したいと考えています。

今後の展開

幼児版図形ゲーム「領域選択ゲーム」の数学教育効果の研究成果を基に、幼児教育産業向けにこのゲームの製品化の可能性を探求する予定です。
また、「領域選択ゲーム」の高齢者版を製作して、アルツハイマー病など空間認知の病気の改善効果の検証を行いたいと考えています。